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先日発売された The Romantic Piano Concerto, Vol. 58 – Pixis & Thalberg
から、非常に珍しいピクシスのピアノ協奏曲2曲を紹介します。批評ではなく、個人的印象・感想です。


 ピクシス? 知らない人も多いでしょう。私も「ディアベッリのワルツによる変奏曲/Variationen uber einen Walzer von A.Diabelli」に参加している部分と、「ヘクサメロン変奏曲/Hexameron variationen」の部分しか聞いたことありません。

私が愛読しているWebSiteピティナ・ピアノ曲事典には、以下のように紹介されていました。

Pixis, Johann Peter  [ ドイツ ]  1788 - 1874

ドイツの作曲家。作曲家でオルガン奏者の父親から音楽の手ほどきを受けた。次男のピクシスは、兄もまた作曲家となった。兄はヴァイオリンを弾き、ピクシスはピアノを弾いた。兄と演奏旅行をしてピアニストとして有名になったが、ピクシス自身もヴァイオリンやチェロを弾くことができた。

 19世紀に入ると一家でウィーンに移る。そして、ピクシスはベートーヴェンやマイアベーア、シューベルトと出会った。後にパリに移り、そこではハイネやケルビーニ、モシェレス、リスト、ベルリオーズ、ロッシーニと出会っている。パリではヴィルトゥオーソとしてその名を馳せ、ピアノ教育者としても活動した。晩年はバーデン・バーデンで過ごした。

 作品の大部分がピアノ曲となっており、コンサート・ピースとサロン向きの小品がある。

このページでは作品リストもありますが、ピアノ独奏曲や室内楽曲が圧倒的に多くを占めていますね。特に7曲あるピアノ三重奏曲は聞いてみたい気がします。



さて、ピアノ協奏曲 ハ長調,Op.1001829年に作曲され、「オーストリアの皇帝陛下」に捧げられました。

1楽章Allegro moderatoは、2管編成のオーケストラが、ヴァンハルやプレイエルの交響曲に似た雰囲気の古典的前奏を華々しく展開します。それほど長大ではない前奏部分は、モーツァルトやコジェレフ、トマーシェックや先のヴァンハルの作品と比べると中途半端な感じがしますが、リストなどと比べると大きな違いがありません。第二主題は一変し、優雅な雰囲気に包まれます。

 しかし、ピアノソロに入ると、「ああ、モーツァルトより後の世代の音楽だ」ということが理解できるでしょう。ピアノソロが始まった個所からは、この時期のコンチェルトによるあるようにオーケストラは「脇役」に徹底します。休む間もなくピアノの独奏は続きますが、所々で特徴的な和音、三度の重奏パッセージが聴かれます。古典的協奏曲の始まりだと思って聞き続けていくと、「ほぅっ」と驚かされる展開や、パッセージがあるのですが、これといった印象に残る曲ではなく、一聴しただけで口ずさめるような感じではありません。展開においては、急にゆったりしたテンポになったり、感傷的になったりと陰影を強調していますが、当時の聴衆はこの技巧的なピアノ演奏と共に驚かされたのでしょうか?

2楽章Adagio cantabileは短いながらも美しい幻想的なノクターンを聴かせてくれます。

 第3楽章Rondo: Allegretto scherzandoに入ると雰囲気は一変し、この時期多く作られたピアノ協奏曲のロンドの典型というべき、民謡的・舞曲的テーマが繰り返され、ピアノは元気よく跳ね回ります。それに応じ形でオーケストラはアクセントをつけていくのですが、うーん、これといった特徴はないですね、というのが素直な感想。最後のファンファーレに導かれて華々しいコーダを迎えます。

 全体を通して、「オーストリアの皇帝陛下」に捧げらるのに相応しい「華々しさ」に彩られている協奏曲です。

ピアノの技巧的な部分は、ドゥシェック、フンメル、クラーマーといった作曲家に影響されているかな、といった感じです。


 


小協奏曲変ホ長調,Op.681824年に作曲されたもので、先の曲より古典的です。「小」と名がついていますが、急・緩・急の各楽章で構成された典型的な協奏曲で、ただし全楽章切れ目なく演奏されるようになっています。特徴的なのは、あまり聞いたことのない調性が不安定なパッセージが技巧的なソロの部分として何度かあらわれ、それが第一楽章の特殊な雰囲気となっています。小規模の楽曲の割には、第一楽章のオーケスト導入部は長大で、1/3も占めています。

 第二楽章では弦楽のソロとピアノの掛け合いが美しく展開されます。続けて軽快なロンドで占められます。

Op.100の作品よりは、よりまとまっていて、チャーミングな楽曲です。



 こうしてピクシスやヒラー、タールベルク、ヘルツ、カルクブレンナー、クラーマー、モシェレス、ドゥシェック等などの楽曲を聞いてくると、自分の好みではあるのですが、如何に「モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン」が素晴らしいメロディーメーカーだったのか、再認識させられます。彼らは、自演を見せながら聞かせる、自分の演奏技巧を披露する楽曲がメインであり、スタンダードな「ヒット曲」を作り出すまでには至っていない、というのが自分の思うところ。



もっともこうした隠れた作品を多く聴ける時代になったことに感謝しつつ、今日はこれくらいで。




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