今回は発売されてからちょっと経ってしまいましたが、リリースされるたびに逃さず買い入れ聞き込んでいるNaxosレーベルのカール・ツェルニー「ピアノと管弦楽の作品」シリーズです。
 世界初録音や珍しい楽曲のオンパレードですのでこの時代の作曲家ファンとしては大変嬉しいシリーズです。新譜はツェルニー:ピアノ協奏曲 ニ短調(1812)/序奏、変奏曲とロンド Op. 60 (トゥック/イギリス室内管/ボニング)です。



収録されているのは・・・
 1.序奏と華麗なロンド 変ロ長調 Op. 233 *他のリリースでも聞ける
 2.ピアノ協奏曲 ニ短調 (1812)*まったく聞いたことがなかった世界初録音
 3.C.M. ウェーバーの歌劇「オイリアンテ」の狩りの合唱による序奏、変奏曲とロンド Op. 60 *これも聞いたことがない曲

 ツェルニーはベートーヴェンともフンメルとも近い人物で、ベートーヴェンの直弟子でありながら、フンメルのピアノ奏法に陶酔し、フンメルからも学んでいます。それを裏付ける証言が彼の自叙伝に記載されていて、フンメルをはじめて見たときの感想から、演奏を聴いたときの感動まで綴っています。
 ツェルニーの名はピアノをちょっとでも習ったことがある人ならば必ず聞く名前でしょう。そして延々と続くその練習課題曲に「怒り」「憎しみ」「苦手」などのトラウマを抱えている人もいるのではないでしょうか?(笑)

 私は以前にも述べたのですが、1970年代終わりに輸入版でフェリシア・ブルメンタールの一連の珍しいピアノ協奏曲シリーズでOp.214の大協奏曲やハイドンの皇帝のテーマによる大変奏曲で、フンメル、カルクブレンナー、タールベルク、ヒラーらの作品と共に魅了されたのですが、当時名前を知っていたのはこのツェルニーとフンメルだけでした。
 「初心者の練習曲と違って、ロマンチックだしベートーヴェンみたいだなぁ」と感じた覚えがあります。もともとNHK−FMでハイドンの皇帝のテーマによる大変奏曲が流れて、「ウエーバーかな?フンメルかな?ショパンの知らない作品ではないよな?」なんて聞いていて、解説聞いてツェルニーと知り、そのレコードを取り寄せてもらったのでした。

 さて、今回一番楽しみにしていた曲というのは「ピアノ協奏曲ニ短調(1812)」です。モーツァルトが亡くなった1791年の生まれですから、20歳とか21歳とかの青年時の楽曲ですね。既に演奏家としてもピアノ教師としても名の知られた存在でしたが、ピアノとオーケストラの作品は書かれていたものの、ピアノ協奏曲はこの曲が初のものだということです。
 有名な(*注意:クラシックマニアの間では)Op.214はベートーヴエンのハ短調協奏曲に影響されたかのようなテーマ、展開、オーケストレーションが特徴ですが、果たして若いときの作品はどうだろう?と思い聞き始めました。

 感想から言いますと、前奏のオーケストラがシンフォニックで豊かな響き、そしてファンファーレを伴っての前向きな雰囲気の作品、ということ。同じニ短調のモーツァルトの作品とは方向性も感じられる心情・風景も違います。どちらかというとよりベートーヴェンの作風に近い同門のフェルディナント・リース的?とも感じました。
 しかし、ツェルニー自身の中後期のピアノ作品に感じられる初期ロマン派的なメロディーやフンメルから始まるヴァルトーゾ協奏曲で特徴的なピアノのパッセージという感じとはまた違うものを感じます。
 それは一言でいうなら「冗長」

 この時代はたくさんの自作品を演奏するヴァルトーゾというくくりでの作曲家によるピアノ協奏曲が数多く作られた時代でしたが、モーツァルト・クレメンティが第一世代だとすると、第二世代のベートーヴェン、フンメル、ウエーバー、ドゥシェック、シュタイベルト、フィールド、モシェレス、クラーマー、カルクブレンナー、リースという括りにツェルニーも含まれるでしょう。でも上に揚げた作曲家の協奏曲よりも「長くて面白くない」曲だと思ってしまいました。
 先に述べたように交響的でファンファーレを伴う前奏で期待値は上がっていくものの、ピアノソロが始まっていくと、メロディーもパッセージも曲の輪郭が薄まっていき、全体を通すと印象が薄い作品に感じました。
 しばらく何回か聞き続けていこうと思いますが、感じ方は変わるでしょうか?

 Op.214の協奏曲は立派な、もっと緊張感のある作品でしたが、どうもツェルニーのピアノと管弦楽の作品の魅力は、有名なオペラのテーマを利用した序奏とロンド、幻想曲、変奏曲に魅力があると思います。それを裏付けるように「C.M. ウェーバーの歌劇オイリアンテの狩りの合唱による序奏、変奏曲とロンド Op. 60」は魅力的で聞く者を引き付ける期待させる序奏から、有名なメロディーの輪郭を残しながら変形・変奏させていく楽しさ、ロンドの華麗なピアニズムなど、飽きずに最後まで聞き入ってしまいます。

 なんだかピアノ協奏曲に関しては魅力がないというような書き方になってしまい、その他のアルバムについても過去にレビューしましたが、結果的にはこの時とおんなじ感覚・感想となりました(笑)

 しかし、私がこのアルバムを是非手元に置いておきたくなる程の魅力的な作品であることは間違いありません(どっちなんだ?) その理由は、ベートーヴェンやショパンなどと比べてしまうと「弱い」だけであって、この時代の音楽界を知りえる上ではとてつもない貴重な体験をさせてくれます。
 練習曲とは違うツェルニーの本当の顔と才能を知る上でも、大変重要なこのシリーズは、過去のアイテムと共に私の最重要コレクションの棚に入ります。

<同シリーズの紹介>



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