珍しい録音のCDがリリースされたので紹介。モーツァルトのレクイエムのピアノソロ編曲版。しかもその編曲者は、あのピアノ演奏の大家で、偉大な教育者、ベートーヴェンの弟子でリストの師匠。現代のピアニストの大方はこのツェルニー ~ リスト の系譜ではなかろうか。

 これまでリスト編曲の「ラクリモーサ(涙の日)」とか、レクイエムの一部は録音され聞くことができたが、全曲をツェルニーの編曲版で聞ける日が来るとは思わなかった。

 カール・ツェルニー(Carl Czerny, 1791年2月21日 ウィーン‐1857年7月15日 ウィーン)は、オーストリアのピアノ教師・ピアニスト・作曲家で、ピアノを習ったことがある人にとっては、嫌いになってしまうほど厄介な練習曲が印象強いかもしれないが、交響曲から宗教楽までほぼ是ジャンルにわたって作品を残している。作品番号は861に上り、未出版のものを含めて1,000曲以上の作品を残した多作家であっただけではなく、多くの弟子をもち、演奏活動もして、猫をたくさん世話していたというから驚き。いつ寝ていたのだろう、というほどの勤勉家でもあったらしい。
 以前ここでも紹介したことがあるが(記事)、 フンメルに師事もしており、そのピアノ作風は驚くほどフンメルのピアニズムに近い。ベートーヴェンの作風に近いのは、同じベートーヴェンの弟子でも、フェルディナント・リースの方であろう。


 演奏家の小林京子さんやこのCDの詳細は、HMVサイトで紹介されているし、CDのブックレットに詳細に解説されているので省くが、聞き始めると、あのレクイエムのイントロダクションが「あれ? フランスの印象派のピアノ曲かな」と思えるような雰囲気がある。
 終始一貫として、淡々と、ゆっくり目のテンポで綴られていく世界の中に、独特のハーモニーとシンプルなメロディーが交差し、所々で深い感情と感傷、無心、安らぎといった空気が脳内を包んでいく。

 19世紀初頭に多かった交響曲の室内楽やピアノ編曲版とは違い、ツェルニーの熱意とモーツァルトへの深い愛情・尊敬の念が感じられる。

 編曲作品でこれほど聞きごたえがあったことはない。

 企画、演奏したすべての方達と、モーツァルト、ツェルニーに感謝します。


739・モーツァルト:レクィエム ニ短調 K.626(ツェルニー編曲ピアノ独奏版)

 小川京子(ピアノ

 録音時期:2012年3月15日
 録音場所:和光市民文化センター
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)





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