フンメルを聞いたことがない方への最初の一枚としてのお勧め盤。
ピアニストでもあり、モーツァルトの弟子でもあり、ショパンに影響を与えたというフンメルの形容詞にぴったりの作品です。

Johann Nepomuk Hummel: Piano Concerto in A Minor and B MinorJohann Nepomuk Hummel: Piano Concerto in A Minor and B Minor
販売元:Chandos
発売日:1992-10-28
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フンメルはクラシック音楽ちょっと聞きます、程度の方には知名度無しでしょうが、クラシックファンの間ではかなり王道の作曲家。

トランペット協奏曲はハイドンの有名曲とカップリングになることも多く、日本では一番知られているでしょうが、フンメルの代表作といえるのがピアノ協奏曲、しかもこの2曲でしょう。

このフンメルにはピアノ協奏曲が8曲有り、そのうち生前出版された曲が5曲あります。つまり第5番までしか番号が与えられていません。

ここに収録された2曲は、第2番と第3番ということになります。

第2番 イ短調 Op.85
編成は、フルート、2オーボエ、2クラリネット、2ファゴット、2ホルン、2トランペット、ティンパニ、弦という古典派の標準的なもの。

エステルハージ家の楽長を辞してしばらくウィーンで舞曲や舞台作品、室内楽の作曲家として大いに人気を集めていました。妻に進められてピアニストとしての舞台にも復帰し、1816年のドイツ演奏ツアーは大成功を収め、ここから「ピアノの巨匠」の地位を不動のものとしたのです。このツアーで演奏されたのがOp.85の協奏曲です。

第3番 ロ短調 Op.89
編成は、Op.85とほぼ同じですが、ホルンが4本になっています。これは第2楽章のロマンティックで幻想的な部分で活かされています。
楽曲はベートーヴェンの影響もあるのか、力強く、ピアノソロはよりブリリアントでショパン的になっています。1819年、ワイマールの宮廷楽長に就任した年に作曲されました。
なお、ショパンのピアノ協奏曲は、この曲の影響がかなり反映されています。

このアルバムはフンメルの近年のブームのきっかけともなったアルバムでかつ最大のヒットアルバムでしょう。

音楽史における「ピアノヴィルトゥオーゾ」を最初に名乗り、また世間に認められた技巧的で華やかなピアノが活躍する古典派協奏曲の代表作で、この時期の作曲家では唯一のライバルがベートーヴェンというのも頷けます。

楽曲は2曲とも短調ですが、悲しいとか暗いとかではなく、美しいという表現がぴったりで、師匠のモーツァルトの伝統と次世代のショパンを予見させる雰囲気を持っています。

演奏も録音も優秀で、当時のグラモフォン賞受賞アルバム。

フンメルを聞いてみようかなと思われる人のファースト・チョイスにオススメです。