フンメルの名は音楽史には必ず出てくる(といっても触れられている程度が多い)し、ベートーヴェンの書籍、ショパン、シューベルト関連の書籍には良く出てくる。一方、直弟子であったのにもかかわらず、モーツァルト関連の書籍には詳しく述べられているものが意外と少ない。また、その音楽はクラシックファンであったり、演奏者(プロアマ問わず)であっても意外と知られていないのが現状である。

 

 フンメルの生きた時代は、よく言われるように「古典派」と「ロマン派」の狭間に位置するが、だからといってフンメルの音楽が中間的で、あいまいな音楽であるということではない。管弦楽曲やオペラ、ミサ曲などはまさにウイーン古典派そのものであり、個人的にはどちらかというとフンメルは「古典派」であると思っている。一方、ピアノ楽曲の性格や書法を見るとショパン、メンデルスゾーン、シューマン等のロマン派の音楽に非常に近いといえる。

 

 フンメルはロマン派に多い短調作品よりも古典派に多い長調作品が多い。短調作品も旋律はショパンのように哀愁漂うものは少なく、シューマンのように何かを描写している標題音楽でもなく、形式をはみ出すことも少なく、職人であり、立場もフリーランスではなく宮廷楽長である。ベートーヴェンに比してのこの人の生き方(精神)のドラマ性の無さが、しばらく忘れられた作曲家にされてしまった原因のひとつだと考えている。