フンメル研究ノート〜Review〜

ヨハン・ネポムク・フンメル(Johann Nepomuk Hummel)の個人研究サイトのレビューページ。CD紹介をはじめ、フンメル関連ニュース等を紹介していきます。 ●フンメル研究ノート●http://hummelnote.wix.com/hummelnote

シューベルト

新譜案内 フンメルとシューベルトのピアノ五重奏曲

 フンメルの室内楽曲は、彼の作曲活動期間全般に渡って作曲されていますが、特に後期のピアノ・ヴァルトーゾの時代よりは、作曲活動が一番活発だったウイーン時代、エステルハージ楽長時代にその多くが生み出されています。
 その音楽は解りやすいメロディーと単純な伴奏からなるロココ、古典派のような主題の提示から、19世紀のショパンやメンデルスゾーンと言ったロマン派時代の装飾的でかつセンチメンタルなメロディーがブレンドされたような音楽となっています。
 このピアノ五重奏はOp.87という中期以降の作品ナンバー(1822年出版)が与えられていますが、作曲自体は1816年という早い時期で、先だって出版された7重奏曲ニ短調,Op.74のピアノ五重奏版が予想以上の反響を呼んだため、未出版作品を後追いで世に出したものと思われます。

この2曲は当時のヒット作となり、このCDのカップリングでもあるシューベルトの有名な「ます五重奏」が生み出されるきっかけともなりました。シューベルトの友人・パウムガルトナーが「フンメルのような五重奏曲を」という希望をだしたのです。
 その意味では、この2曲は同時代の最も優れたピアノ五重奏曲であり、また最もポピュラーなものでしょう。
 お聞きいただければ解ると思いますが、フンメルの作曲技量、センスの良さがご理解いただけることと思います。

 このCDでの演奏は古楽器でのもので、当時の響きを彷彿させるものなのかもしれません。フンメルからショパンに繋がるピアノ曲は、装飾が多く、軽やかなタッチと主旋律を透明感ある響きで再現しなければなりません。
現代のピアノでも名演奏家はそういう演奏を聞かせてくれます。古楽器ではより明確になるはずですが、録音のためか、演奏の為か、ピアノの音が濁りすぎて聞こえるところが多々あります。

この種の古楽器演奏で演奏、録音共に優れていると思ったのは、Voces Intimae Trioの全集です。ピアノ三重奏ですが機会があれば是非。

といってもこの演奏は悪いと言っておりません。非常に丁寧に演奏されており、また楽しく演奏している様子がうかがえるものです。シューベルトのます五重奏も第一楽章から温かみと心地よいテンポで我々を魅了してくれます。

CHpt87
The Music Collection
Simon Standage violin
Peter Collyer viola
Poppy Walshaw cello
Elizabeth Bradley double-bass
Susan Alexander-Max fortepiano - director
Recorded in:
Finchcocks Musical Museum, Goudhurst, Kent
20-22 May 2013

ヨハン・ネポムク・フンメルの生涯−10.ベートーヴェンとの別れ

以後の記述は、The Hummel Projectの記事をメインに加筆・改定しております。

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Portrait-of-Beethoven-by-Arthur-Paunzen
  フンメルは1826年にウィーンで楽友協会会員に選出された。また、長年の友人でもあり、若い時にはライバルでもあったベートーヴェンの体調が優れず、翌年早々には危ないのでないかという噂を聞いていたため、1827年にベートーヴェンとも旧知の仲である妻・エリザベートと一番弟子のヒラーを連れてウイーンに行き、ベートーヴェンを見舞った。
 
この時の様子は、ヒラーの自伝・回想録に描かれている。それによると、1827年3月8日から23日までの間に4回ベートーヴェンの家に訪れている。過去の25年に渡る間には、様々な諍いがあった。生き方の違い、作曲法の違い、弟子たちの争い、誤解による絶交... しかし、この最後の会談ですべてを忘れる厚い抱擁があったという。妻・エリザベートは、ベートーヴェンを着替えさせ、体を拭いてあげたりするなど献身的な看病をした。筆談ではあったが、ベートーヴェンはフンメルに伝えた。
 
「ヨハン、君は幸せ者だね。成功して立派な弟子もいる。
そして何よりこんな美しい素晴らしい奥さんがいるんだから」
 
ベートーヴェンはフンメルの楽友教会の主催する慈善演奏会の自分の席を確保するように頼み、自分が死んだら記念演奏会にフンメルが出演して欲しいとも述べた。さらにエリザベートには、自分の髪を切って持っていて欲しいと伝えた。そして、フンメルには是非とも著作権の活動を頑張ってほしい、言い残した。
余談【ベートーヴェンの遺髪】
「鉛中毒説」の根拠となったベートーヴェン毛髪の研究は、1994年、ベートーヴェン研究家アイラ・ブリリアント氏とアルフレッド・ゲバラ氏がロンドンのサザビーズで毛髪を落札したのが始まりです。その後DNA鑑定の末、彼の病気に関してさまざまなことが判明したのですが、この毛髪を巡る歴史的な展開は「ベートーヴェンの遺髪」(白水社)という本にまとめられています。2人が遺髪を落札して、鑑定を依頼する話とは別に、170年の間、遺髪がどういう経路を辿って競売に付されたのかを探っています。
かいつまんで紹介しますと、1827年、ベートーヴェンが他界した時、弔問に訪れた音楽家のフンメルと弟子のヒラーが、遺髪を切り取りロケットに収めたのが「運命」の始まりです。ヒラーが死の前に息子のパウルに譲り、1911年、パウルが形見のロケットを修理に出した後、遺髪は数奇な運命を辿っていきます。その後遺髪が確認されたのは、ナチのユダヤ人迫害が強まった時代、デンマークの港町ギレライエの町医師のところでした。ユダヤ人であったヒラー家とナチ時代の迫害、そしてデンマークへの移動と、ベートーヴェンの意思とは関係なく、遺髪は歴史の流れに翻弄されました。最後に、ベートーヴェンが生前弟子に託した中で、自分の病気の解明というのがありましたが、この遺髪のおかげで、少なくとも彼を終生悩ませた下痢や腹痛に関して大方の原因が解明されました。(「作曲家の病歴2. ベートーヴェン」より)

23日の最後の訪問後の3日後、ベートーヴェンは息を引き取った。

フンメルは葬儀で柩の担い役を務め、またシンドラーとベートーヴェン友人たちが主催した追悼演奏会ではベートーヴェンの意志を受けて故人の作品の主題による即興演奏をいくつか行った。
フンメルは第七交響曲のアレグレットからの変奏曲とオペラ『フィデリオ』のなかの囚人の合唱に基づく幻想曲を演奏したが、これは非常に多くの人感動を与えた、とヒラーは書き残している。
■ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番より第二楽章 

Franz_Schubert_by_Wilhelm_August_Rieder_1875 この滞在中にフンメルはシューベルトにも会い、あるとき彼の歌曲<盲目の少年>を基に即興演奏を行って、彼を大いに喜ばせた。シューベルトは最後の3つのピアノ・ソナタをフンメルに献呈しており、彼の演奏を望んだと思われるが、これらは両者の没後に出版されたので、出版業者は献呈先をシューマンに変えた。

【打込音源紹介】フンメル/ピアノ五重奏曲変ホ短調,Op87より終楽章


フンメル/ピアノ五重奏曲変ホ短調,Op87より終楽章を試聴


打ち込み音源紹介。

ピアノ音源はEastWest Boesendorfer 290だが、弦はHQ Synthesizer Orchestral。
これは打ち込み編集技術が優れていないと、このようにしょぼい音になります。

フンメルのピアノ五重奏曲Op.87はコントラバスの入った五重奏曲としては音楽史上の最初の作品であることは注目に値します。

このピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成の五重奏曲は、この後オンスロウ、リンマー、シューベルト、と続々書かれていきますが、この曲の作曲年が1802年というところが驚かされます。あのロンド・ファヴォリ,Op.11よりも前なのです。ウイーンでベートーヴェンと並んで人気の高かったフンメルの初期の傑作作品といえるでしょう。

出版は20年後の1822年で、そのため作品番号は87となっていますが、何故それまで出版されなかったのかは不明です。ただ、ピアノと管弦楽の七重奏曲(Op.74)がヒットして、ピアノ五重奏曲用に自ら編曲した際に、この編成と同じにしており、その直後にこの五重奏は20年の時を経てウィーンのSteiner und Compによって出版されました。

1822年といえばシューベルトの同編成の「鱒五重奏曲」が出版されています。昔はフンメルがシューベルトの後にこの作品を作曲したと誤解されていましたが(昔のLPの解説などで良く書かれていた)、事実は逆であり、アマチュアチェリストであるパウムガルトナー(S.Paumgartner)がフンメルの作品をシューベルトに紹介してピアノ五重奏を書くように薦めています。


おすすめCDはこれかな。




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シューベルト:ピアノ五重奏曲『ます』、フンメル:ピアノ五重奏曲 デンハーグピアノ五重奏団

HMVサイトより 新譜紹介

「19世紀における珠玉のピアノ五重奏作品集 Vol.1」として、下記のシューベルトとフンメルの五重奏が第一弾でリリースされるようです。この二曲に関しては過去にも何度も触れております。

期待したいのは、この時期の他の作曲家のリリースが継続的になされること。第一弾と謳っておいて立ち消えになる企画が多すぎます。

オンスロー、リース、F.X.モーツァルト、クラーマー、ドュシェック、リンマー... ブリリアントレーベルから出ているシリーズを凌ぐものにしていただきたいです。


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・シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調 D.667『ます』
・フンメル:ピアノ五重奏曲変ホ短調 Op.87

 デンハーグピアノ五重奏団
  小川加恵(フォルテピアノ)
  高橋未希(ヴァイオリン)
  アダム・レーマー(ヴィオラ)
  山本徹(チェロ)
  角谷朋紀(コントラバス)

 録音時期:2011年8月31日〜9月2日
 録音場所:デンハーグ、デルフト・カトリック教会
 録音方式:ステレオ(DSD/セッション)
 録音エンジニア:タッド・ガーフィンクル(Ma recordings)
 日本語解説・帯付
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超優秀録音
天才録音技師タッド・ガーフィンクル氏の最新録音!
第16回ファン・ワセナール国際アンサンブル・コンクールで優勝し、
ヨーロッパ・デビューを果たした今話題のアンサンブルによる待望の初録音登場!

第16回ファン・ワセナール国際アンサンブル・コンクールで優勝し、ヨーロッパ・デビューを果たした今話題のアンサンブル、デンハーグピアノ五重奏団がついにCDデビュー! 非常に高い演奏技術と豊かな表現力をもった当団が傑作『ます』に挑みました。今後ますますの活躍が期待される彼らの瑞々しい音楽をご堪能ください。

【天才録音技師タッド・ガーフィンクル氏こだわりの録音】
録音にはMAレコーディングズの特別改造されているコルク社のMR-2000SのDSDレコーダーを、マイクロフォンはMAレコーディングズ専用のラインレベル出力の世界で2本しかない特別もの使用。またマイクロフォンケーブルはUSAのSTEREOLAB社のカスタムメイドの採用し、非常にリアルな音声をとらえております。

【デンハーグピアノ五重奏団】
オランダ王立デンハーグ音楽院古楽科で学んだメンバーを中心に、2008年発足。2009年オランダ、ユトレヒト古楽音楽祭でデビューし、その後も2010年バルセロナ古楽音楽祭(スペイン)、サント古楽音楽祭(フランス)、アントワープ古楽音楽祭(ベルギー)などヨーロッパの主要な古楽音楽祭に招聘される。2011年度TYリミテッドサポートプログラムによるレコード支援対象団体に選ばれ、2012年7月には当団初となる、CD「19世紀における珠玉のピアノ五重奏作品集 Vol.1」(MAJ508)が発売される。2011年11月、オランダ、アムステルダムで行われた第16回ファン. ワセナール国際古楽アンサンブル・コンクールにて第1位を受賞。2012〜2013年にかけてオランダ、ベルギーにて優勝記念ツアーが予定されている。(キングインターナショナル)



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1月31日はシューベルトの誕生日

Franz_Schubert_by_Wilhelm_August_Rieder_1875本日はフランツ・ペーター・シューベルト(Franz Peter Schubert, 1797年1月31日 - 1828年11月19日)の生誕215年です。
区切りの良いようなそうでもないような...

シューベルトも大好きな作曲家です。初めて聞いたのは、小学校2年生の時に買ってもらったLP盤でベートーヴェンの第5のカップリングとして収録さ

れていた「未完成交響曲」。小澤 征爾/ボストン響だった記憶が...
その後、岩城宏之/札幌交響楽団の演奏を函館で聞きました。初のクラシックコンサートだったかな?
音楽の授業で聞いた「魔王」にはハマりませんでした(笑)

シューベルトで好きなのは初期の交響曲第1〜3番、未完成とグレート。ピアノ五重奏「鱒」や八重奏曲。歌曲の王とか言われていますが、彼のメロディ

ーは「人間の歌声」を楽器やオーケストラに反映させているかのようで、美しく歌わせるメロディーが多く、自然に流れるものが多いです。この辺りは

ベートーヴェンよりモーツァルトに近い気がしますね。


さて、ではフンメルとはどういう関わりがあるのでしょうか?

まず、シューベルトの歌曲というとゲーテ(Goethe)を思い浮かべます。ゲーテとフンメルは同時期にワイマールで活動しており、ともに巨匠としてこの街を訪れる人の目的ともなっていたほど。
「ワイマールではゲーテとフンメルに会わずしては帰れない」と言われていたそうです。
フンメルは、ゲーテとの交流の中で多くの未出版作品(プライベート楽曲)をゲーテに聞かせ、また献呈しています。それらの多くはカンタータで、代表的なものとしては〜
S.158 ◇ゲーテの誕生日用合唱曲「今日、気高き仲間に」 1822 Heute lasst in edlen Kreis (T, B, SATB)
S.173 ◇ゲーテの誕生日用独唱曲「陽気な日は」 1827 Kehrt der frohe Tag (独唱、声)
S.177 ◇ゲーテの誕生日用歌曲 変ロ長調 1829 歌詞欠
S.180 ◇ゲーテの誕生日用独唱曲「私たちは陽気に登る」 1829 Wir steigen frohlich (独唱、声) *消失
S.187 ◇ゲーテの在ワイマール50年祭用独唱曲「歌声をあげよ」 1825 Herauf Gesang (独唱、声) *消失
S.195 ◇ゲーテの誕生日用歌曲「夢は快く甘かった」 1831 *未完 Lieblich war der Traum
などでしょうか。

また、ゲーテのリクエストに応えて、モーツァルトの交響曲を室内楽用に編曲したり、ピアノソロ用に編曲して演奏もしたそうです。

また、フンメルの歌曲において、ゲーテの詩を使用している曲もあります。
「Zur Logenfeier  Lasst fahren hin das Allzufluchtige」



あれ? 長くなったので、シューベルトとの話は次回ということで...


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フンメル研究ノートというサイトは、クラシック音楽鑑賞を趣味とする一個人が、ヨハン・ネポムク・フンメルの音楽の魅力に取り付かれ、永年かけて収集した情報・データをメモ代わりに掲載している「フンメル研究ノート」のレビューページにあたります。フンメル研究ノートは、あくまでもCD解説、書籍、辞書などから集めた情報を盛り込んだ継ぎはぎの情報を集めたものですので、事実とは違っていたり、解釈が違っている箇所も多いと感じていますが、もっと多くの日本人にフンメルの音楽の魅力を知ってもらいたいと思い公開しています。もっとフンメルの情報が知りたい。またはご興味がある方は、本サイト「フンメル研究ノート」を覗いてみてください。よろしくお願いいたします。

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