フンメル研究ノート〜Review〜

ヨハン・ネポムク・フンメル(Johann Nepomuk Hummel)の個人研究サイトのレビューページ。CD紹介をはじめ、フンメル関連ニュース等を紹介していきます。 ●フンメル研究ノート●http://hummelnote.wix.com/hummelnote

ツェルニー

ツェルニー/ピアノと管弦楽のための技巧的変奏曲集

ツェルニー:ベル・カント・コンチェルタンテ

ピアノと管弦楽のための技巧的変奏曲集
(タック/イギリス室内管/ボニング)

573254
レーベル名 :Naxos
カタログ番号 :8.573254


収録曲は、
  • 1.序奏およびベッリーニの歌劇「ノルマ」からのテーマによる変奏曲とフィナーレ,Op.281
  • 2.オベールの歌劇「フラ・ディアボロ」からのモチーフによる大変奏曲op.232
  • 3.ベッリーニの歌劇「海賊」からのルビーニのカヴァティーナによる序奏、変奏曲と華麗なポラッカ ニ長調 ,Op.160
  • 4.バチーニの歌劇「信仰の勝利、ガリアのアラブ人」の行進曲による序奏と華麗なる変奏曲,Op.234

 どの曲も当時ヒットしたオペラから題材を選んでいるピアノとオーケストラの為の変奏曲集。


 Op.73のハイドン「皇帝」のテーマによる変奏曲を聞いた時には、フンメルやウェーバーに匹敵する面白い作曲家、のイメージがあり、練習曲以外(←ここ強調)の楽曲が発売されるやほとんど集めていた作曲家のひとり。
 回想録も出版されており、ベートーヴェンやフンメルとの出会いや奏法のこと、当時の流行などとても興味がもてる内容でした。
 ただし、今回の変奏曲集は、奏法的には技巧的で華麗ではあるけども、全然記憶や印象に残らない感じでした。演奏や録音は優秀。でも楽曲のせいなのかな? 馴染みのないオペラの旋律のせいなのかな?

 僕にとってはツェルニーってなんとなく遊び心が感じられず、いつも「ほほう。なかなかな曲だな」の段階で終わってしまいます。交響曲も立派なんだけど、ツェルニーの交響曲よりもクロンマーの交響曲の方が楽しいし、ピアノ協奏曲もカルクブレンナーの方が楽しい、また聞きたい、と思わせるのです。
 

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ツェルニーの編曲による「モーツァルト:レクィエムのピアノソロ版」 世界初録音

 珍しい録音のCDがリリースされたので紹介。モーツァルトのレクイエムのピアノソロ編曲版。しかもその編曲者は、あのピアノ演奏の大家で、偉大な教育者、ベートーヴェンの弟子でリストの師匠。現代のピアニストの大方はこのツェルニー ~ リスト の系譜ではなかろうか。

 これまでリスト編曲の「ラクリモーサ(涙の日)」とか、レクイエムの一部は録音され聞くことができたが、全曲をツェルニーの編曲版で聞ける日が来るとは思わなかった。

 カール・ツェルニー(Carl Czerny, 1791年2月21日 ウィーン‐1857年7月15日 ウィーン)は、オーストリアのピアノ教師・ピアニスト・作曲家で、ピアノを習ったことがある人にとっては、嫌いになってしまうほど厄介な練習曲が印象強いかもしれないが、交響曲から宗教楽までほぼ是ジャンルにわたって作品を残している。作品番号は861に上り、未出版のものを含めて1,000曲以上の作品を残した多作家であっただけではなく、多くの弟子をもち、演奏活動もして、猫をたくさん世話していたというから驚き。いつ寝ていたのだろう、というほどの勤勉家でもあったらしい。
 以前ここでも紹介したことがあるが(記事)、 フンメルに師事もしており、そのピアノ作風は驚くほどフンメルのピアニズムに近い。ベートーヴェンの作風に近いのは、同じベートーヴェンの弟子でも、フェルディナント・リースの方であろう。


 演奏家の小林京子さんやこのCDの詳細は、HMVサイトで紹介されているし、CDのブックレットに詳細に解説されているので省くが、聞き始めると、あのレクイエムのイントロダクションが「あれ? フランスの印象派のピアノ曲かな」と思えるような雰囲気がある。
 終始一貫として、淡々と、ゆっくり目のテンポで綴られていく世界の中に、独特のハーモニーとシンプルなメロディーが交差し、所々で深い感情と感傷、無心、安らぎといった空気が脳内を包んでいく。

 19世紀初頭に多かった交響曲の室内楽やピアノ編曲版とは違い、ツェルニーの熱意とモーツァルトへの深い愛情・尊敬の念が感じられる。

 編曲作品でこれほど聞きごたえがあったことはない。

 企画、演奏したすべての方達と、モーツァルト、ツェルニーに感謝します。


739・モーツァルト:レクィエム ニ短調 K.626(ツェルニー編曲ピアノ独奏版)

 小川京子(ピアノ

 録音時期:2012年3月15日
 録音場所:和光市民文化センター
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)





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フンメルとピアノ奏法について-4 ツェルニーの証言その2

 カール・ツェルニー(Carl Czerny)は、自叙伝(1842年執筆)の中でピアノ音楽史の中では有名なベートーヴェンとフンメルのピアノの演奏についての言及があり、これは以前、「フンメルとベートーヴェンという記事で紹介した。

 

 ここで述べておきたいのは、下記のツェルニーの証言である。

 

「〜私はといえば、私がいっそうの清澄さと明確さを目指すようになったという意味では、私もフンメルに影響されたことになる」

 

 事実、ツェルニーのピアノ曲、ピアノ室内楽、ピアノとオーケストラの協奏曲らを聞くと、ベートーヴェンというよりフンメルと聞き間違えるほどの書法、奏法を駆使した楽曲が多いのがわかる。この点については、同じくベートーヴェンの弟子であるフェルディナント・リース(Ferdinad Ries 1784-1838)の作品と聞き比べるとその違いが顕著で、リースは明らかにベートーヴェン的であるといえよう。


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リースの作品

Ferdinand Ries: Piano Concertos Op. 123 (1806) & Op. 151 (1826)
Ferdinand Ries: Piano Concertos Op. 123 (1806) & Op. 151 (1826)
販売元:Naxos
発売日:2005-11-15

Ferdinand Ries: Piano Concerto; Swedish National Airs with Variations; etc.Ferdinand Ries: Piano Concerto; Swedish National Airs with Variations; etc.
販売元:Naxos
発売日:2007-09-25

Ferdinand Ries: Piano Concertos, Vol. 3Ferdinand Ries: Piano Concertos, Vol. 3
販売元:Naxos
発売日:2009-03-31



ツェルニーの作品
Czerny - Piano works for four handsCzerny - Piano works for four hands
販売元:Sony Classical


Czerny: Chamber MusicCzerny: Chamber Music
販売元:Meridian
発売日:1998-06-23

Rondo Brillante: Early Romantic Works for Piano and OrchestraRondo Brillante: Early Romantic Works for Piano and Orchestra
販売元:MSR
発売日:2006-08-22

フンメルとピアノ奏法について-3 ツェルニーの証言その1

 フンメルの演奏については、ベートーヴェンの弟子でもありリストの師匠ともなったカール・ツェルニー(Carl Czerny)の自伝の中に次のように記載されている。

 

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 およそ1802年から04年までの数年間、私は父と一緒にモーツァルト未亡人(*コンスタンツェ・モーツァルト)の家を訪れていた。そこでは土曜日ごとに音楽の夕べが催されていたからである。そこでは、シュトライヒャーの弟子でもあるモーツァルトの息子(*フランツ・クサーヴァー・モーツァルト=1791年生まれのモーツァルトの末子)がきわめて巧みに演奏していた。

 

 そんな音楽の夕べのひとつのことである。いつもよりずっと多くの人々が集まっていた。ところが私はそうした多くの優雅な紳士淑女の中に、随分と奇異な感じのする風貌の青年がいるのに気がついた。

 

・いつもピクピク動かしている下品で不快な顔面

・きわめて趣味の悪い服装

・薄ねずみ色のフロックコート

・深紅色の長いベストと青色のズボン

 

以上の姿からは、どこかの田舎村の学校教師ではないかと思われたが、そんな感じとは裏腹に、彼の指という指には高価な指輪がはめこまれていて、それらが一緒になって光り輝いていた。

 

 音楽会はいつものようにすすめられたが、最後になって例の青年(20歳をいくらか超えたであろうと思われる)が弾くように勧められた。

 

 私はそこでなんとすばらしい巨匠の演奏を聞いたことか!

 

 当時の私はすでに、ゲネリック、リパフスキー、ヴェルフル、そしてベートーヴェンでさえも聞く機会をしばしば持っていたのに、この貧相な男の演奏は、私にはまるで新世界のように思われた。私はそれまで、
これほど新しくて輝かしい技法を、
これほど清澄で典雅で繊細な演奏表現を、
これほど豊かな趣味を持ってまとめあげられたファンタジーを
聞いた事は一度もなかった彼がその後、モーツァルトのソナタを数曲、クロンマーの弾くヴァイオリンと一緒に演奏したとき、以前から知っていたそれらの曲も、私には新世界に移ったのである。


 演奏が終わってすぐ、この青年がフンメルという名で、かつてはモーツァルトの弟子であり、今はロンドンから戻ってきている(ロンドンではクレメンティに師事していた)ということを知った。
 

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ツェルニーの自叙伝(1842年執筆)より
*注釈:フンメルノート

 

 

(つづく)

フンメルとベートーヴェンについて

 ベートーヴェンの演奏が、その驚くべき力、品位、前代未聞の妙技と達者さによって目立っているとすれば、フンメルの演奏はこれに反して極めて清麗で明確な演奏の模範であり、最も人を魅了する優雅さと繊細さとのモデルであって、フンメルがモーツァルトの奏法とクレメンティ派のそれとを楽器に適するように巧みに合わせて以来最も困難とするところは、いつも最高の、そして最も驚くべき効果を狙う点にあった・・・。

 フンメルの追随者たちは、ベートーヴェンのことを「彼はピアノを虐待し、ただ混乱した雑音を作るに過ぎない」と悪口を言い、また「彼の作品は不自然で、わざとらしく、非旋律的で、変則的だ」と貶した。
 一方ベートーヴェンの信望者は、「フンメルにはすべてにおいて真のファンタジーがかけている。その演奏はクラヴィコードのように単調で、彼の指は蜘蛛のようにしがみつく。そして彼の作品はモーツァルトとハイドンのモティーフの単なる焼き直しにすぎない」と主張した。

ツェルニー回想録より

音楽家の自叙伝―クヴァンツ/ベンダ/E・バッハ/ツェルニー

音楽家の自叙伝―クヴァンツ/ベンダ/E・バッハ/ツェルニー音楽家の自叙伝―クヴァンツ/ベンダ/E・バッハ/ツェルニー
著者:東川 清一
販売元:春秋社
発売日:2003-04-01
クチコミを見る

今回ご紹介するのは、4人の作曲家たちの自叙伝の邦訳。
今も昔も有名人は自叙伝(もしくは自伝)がお好きなようで、特にロマン派以降は多いですね。また、身近にいた者の回想録なども多いです。

モーツァルトはこの手のものは書きませんでしたが、死後すぐに多くの人が証言したものをノヴェロ夫妻が記し、今では邦訳でも手に入れることができます。

シュポアの回想録などは、当時の音楽事情や音楽家ならではの観点から見た批評などが豊富らしく、是非手に入れたいと思っていますが、実現には至っていません。

フンメルもモーツァルトとの回想録や自叙伝があるようですが、現物を読んだことがないため、是非この本の訳者と出版社にお願いしたいと思っています(他力本願...)

さて、同書においてツェルニーはベートーヴェンともフンメルとも近い人物で、ベートーヴェンの直弟子でありながら、フンメルのピアノ奏法に陶酔し、フンメルからも学んでいます。それを裏付ける証言がこの自叙伝に記載されていて、フンメルをはじめて見たときの感想から、演奏を聴いたときの感動まで綴っています。

クヴァンツは、フルートの大家で作曲家、ベンダはモーツァルトにも影響与えた作曲家です。内容はここでは触れませんが、当時の生活ぶり、仕事ぶりがわかって大変楽しく読めました。値段も手ごろなので是非一読を。
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フンメル研究ノートというサイトは、クラシック音楽鑑賞を趣味とする一個人が、ヨハン・ネポムク・フンメルの音楽の魅力に取り付かれ、永年かけて収集した情報・データをメモ代わりに掲載している「フンメル研究ノート」のレビューページにあたります。フンメル研究ノートは、あくまでもCD解説、書籍、辞書などから集めた情報を盛り込んだ継ぎはぎの情報を集めたものですので、事実とは違っていたり、解釈が違っている箇所も多いと感じていますが、もっと多くの日本人にフンメルの音楽の魅力を知ってもらいたいと思い公開しています。もっとフンメルの情報が知りたい。またはご興味がある方は、本サイト「フンメル研究ノート」を覗いてみてください。よろしくお願いいたします。

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