Muzio_Clementi 「ピアノフォルテの父、演奏家、教師、出版社、ピアノ制作者」として知られるムツィオ・クレメンティ(1752-1832)。しかし彼は晩年に至るまで同時代に国際的な名声を博していたベートーヴェンに交響曲作曲家として肩を並べたいという野心を抱いていたのです。

 とは言え、モシェレスが「クレメンティのシンフォニーは1820年代以降はヨーロッパの演奏会のレパートリーから消えてしまった」と語るように、クレメンティの交響曲は初期の2曲、Op.18を除いては消滅したとまで言われていました(一説によると、クレメンティ自身が「絶望の発作」で全て破棄したとも)。今回のメインとなる4つの交響曲も彼の生前に発表されることはなく、クレメンティ自身も「交響曲のスコアは全て破棄した」と述べていました。

 これらが作曲された時期は1810年代から1820年代初頭まで。とくに1813年、ロンドンにおけるフィルハーモニー協会を創設するにあたって準備していた彼に、交響曲を作曲・演奏のチャンスを与えたものと思われます。そして自作交響曲を大陸の聴衆に紹介すべく、自らフランス、ドイツに出向きオーケストラ団体に働きかけ、1816〜17年はパリのコンセール・スピリチュエルで、22年にはベルリンのゲヴァントハウス管弦楽団で三度自作交響曲を指揮したと言われています。


 さて、紛失したと思われていたクレメンティの交響曲ですが、1921年にモーツァルトの研究でも名の知られたフランスのジョルジュ・ドゥ・サン・フォワが1917年に競売を経て図書館に買い取られた手稿譜の中に、交響曲の断片が含まれているのスコアを見つけ出し、これを復元。4曲の交響曲と序曲、メヌエット・パストラールをピエトロ・スパーダが補作完成して演奏可能な形にしたのです。


 感想は「意外と洗練されていてイケルじゃん」(笑)

 モーツァルトというよりはハイドンの作風に似ていますが、ハイドンのパリ交響曲と比べても結構タイマン張れるのでは?と思えてしまいます。

 補作完成版の管弦楽法が素晴らしいのか、オリジナルがこうであったのかは不明なのですが、2管編成にトロンボーンが2本つく古典派の中での大編成で、木管がしっかり活躍しているし、金管は鳴り響いています。

ピアノ練習曲でクレメンティに出会った方は是非交響曲聞いてみてください。この作曲家への印象が180度変わりますよ。


【音源紹介】
とりあえず触りを聞いてみたいというのであれば、録音も演奏も優れているChandosのモーツァルトと同時代人シリーズで第1番とOp.18の組み合わせでリリースされています。

交響曲4曲すべて聞けるのは現在3種あります。
 
825646276264<1>一番古いのはERATOというレーベルで発売されていたクラウディオ・シモーネが指揮するフィルハーモニア管弦楽団の2枚組で、1978年の録音。第1番から4番までの4曲が聞けます。私が初めて聞いたクレメンティの交響曲もこのLP盤でした。 

 
573071<2>最新の録音ではフランチェスコ・ラ・ヴェッキア指揮/ローマ交響楽団によるNAXOS盤があります。2011年からの録音で1番から4番と序曲、直近では原作が残っているOp.18の2曲が発売されるようです。
でも、録音がいまいち。第3番なんて「逆相じゃない?」と思えるほど変な定位になっています。


_SX355_<3>一番のおすすめが1990年代に英ASVというところから発売されていた
フランチェスカ・ダヴァロス指揮,フィルハーモニア管のクレメンティ:管弦楽作品集。現在は再販復刻でBRILLIANTから3枚組で発売されています。
推薦の理由は、管弦楽曲がほぼすべて収録されている(交響曲6曲、序曲2曲、メヌエット、ピアノ協奏曲)事と、とても勢いがあって溌剌とした演奏で、金管が厚みを帯びて鳴り響いていること。

イタリアの指揮者フランチェスカ・ダヴァロスは,1930年生まれで,イタリア国内,ハンブルク,フランクフルト,コペンハーゲンなどで指揮をしていましたが,1987年にフィルハーモニア管を指揮した演奏が評判になり、それがきっかけでフィルハーモニア管を指揮して英ASVレーベルに録音を行うようになり,当時,その演奏は大きな評判になったものでした。

  1993年以降、国内盤も発売されるようになり、特にブラームスの交響曲の録音は、遅れてきた名指揮者ダヴァロスの代表的名演として国内でもかなりの評判だったとのこと。
 私は個人的にはメンデルスゾーンの若々しい演奏が大好きで、交響曲全集と真夏の夜の夢は今でも愛聴盤のひとつです。
クレメンティ/交響曲第1番ハ長調


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