フンメル研究ノート〜Review〜

ヨハン・ネポムク・フンメル(Johann Nepomuk Hummel)の個人研究サイトのレビューページ。CD紹介をはじめ、フンメル関連ニュース等を紹介していきます。 ●フンメル研究ノート●http://hummelnote.wix.com/hummelnote

CD

シュタイベルト ピアノ協奏曲集

シュタイベルトって聞いたことありますか?
 

Steibeltベートーヴェンの伝記などを読むと出てきますので、名前だけは知っているという人も多いかもしれません。

ちょっと音楽史やそうした作曲家のエピソード集みたいなのを読んでいる人には逆に有名な人物かもしれませんね。


何と言ってもベートーヴェンにピアノ演奏の対決申し込んでおいて、実際ベートーヴェンの演奏中に逃げ出してしまった人ですから(笑)


ダニエル・ゴットリープ・シュタイベルト(Daniel Gottlieb Steibelt)は1765年10月22日ドイツ産まれのピアニスト兼作曲家です。時代的にはモーツァルトより9歳下、ベートーヴェンより5歳年上になりますね。

細かいエピソードや滑稽や話、その破天荒な行動や性格のせいか、どちらかというと馬鹿にされて歴史に名を留めてきてます。かわいそうに(笑)


それでもオペラや劇音楽、室内楽も作ってヒットさせている単なる腕のいいピアニストではありません、作曲家です。

この人の経歴や評価はピティナさんところで翻訳されているマルモンテル著『著名なピアニストたち』で詳細が分かりますので興味ある方は是非読んでみてください。


20070923_354692で、そんなシュタイベルトが数々のピアニストの歴史本や音楽史で言及されているのが、「見かけ倒しの派手なテクニックを使ったピアノ演奏で当時の人気を得ていた。しかも奥さんがタンバリン奏者でピアノとタンバリンの踊り付きパフォーマンスで舞台を演出」とか、「本当のテクニックには及ばない見せかけの演奏と作曲技法」とか、シューマンやメンデルゾーンやショパンが、ベートーヴェンとフンメルを評価していたのに比して後輩たちから全く尊敬されていないし言及もされていない作曲家。


散々ですね。その代表曲「ピアノ協奏曲第3番「嵐」」もシュタイベルトの見せかけテクニックをより派手に演出するように作られている、とか(笑)


そんな曲、聞いてみたくなるに決まっているでしょう。と長年思っていましたら、やってくれました、ハワード・シェリー


彼は80年代終わりからのフンメルのピアノ協奏曲シリーズ以降、埋もれてきた古典派、初期ロマン派のピアノ協奏曲を積極的に録音してきました。昨年のドシェックの作品集も貴重でしたし、モシェレス、エルツ、タールベルク、ヒラー、クラーマーなどなど素晴らしい発掘録音しています。僕が一番評価しているのは カルクブレンナーの全集です。


そんなシェリーが今回リリースしたのがなんとシュタイベルトのピアノ協奏曲集。

シュタイベルトは8曲のピアノ協奏曲を残しているそうですが、今回リリースされたのは


ピアノ協奏曲第3番 ホ長調 「嵐 L'orage」 (1799年)

ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 「狩り A la chasse」 Op. 64 (1802年)

ピアノ協奏曲第7番 ホ短調 2つのオーケストラによる「ギリシア風軍隊協奏曲 (1816年)

というシュタイベルトが奇をてらっているとしか言いようのないタイトルと派手な演出がある3曲のピアノ協奏曲です。
 

034571281049

Daniel Steibelt (1765-1823) Piano Concertos Nos 3, 5 & 7 Howard Shelley (piano), Ulster Orchestra, Howard Shelley (conductor)
 CDA68104








<<聴いた感想>>

とにかく楽しい(笑)

なかなか重厚なオーケストラで始まり、それなりの美しいメロディーが次々と流れてきます。

驚いたのが第3番は1799年に作られていますが、モーツァルトが亡くなってまだ8年しかたっていないこと、ベートーヴェンの第3番ハ短調が世に出る前だということ。

その時代にこれだけヴァルトーゾ的協奏曲があったでしょうか?曲だけ聞けば1810〜20年代のフンメルに続く世代のピアノ協奏曲のようです。

有名な第3楽章の「嵐」も派手なオクターブ双方を駆使して、生で見ていたらさぞかし楽しいだろうなぁと感じました。ドシェックやクラーマーのまじめでお堅い協奏曲より絶対楽しいです(笑)


メロディーメーカーではあるけど、ベートーヴェンやフンメルに及ばないのは構成力、メロディーを活かした展開、陰影、でしょうか。聞き終わった後、派手さは記憶されていますがメロディーが思い出せません。とにかくいろんなメロディーの詰め合わせのようになっていて、まとまりがないからですかね?


でもこの時代の協奏曲にまた一つ、楽しめる一枚が加わりました。


 

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新譜案内 フンメルとシューベルトのピアノ五重奏曲

 フンメルの室内楽曲は、彼の作曲活動期間全般に渡って作曲されていますが、特に後期のピアノ・ヴァルトーゾの時代よりは、作曲活動が一番活発だったウイーン時代、エステルハージ楽長時代にその多くが生み出されています。
 その音楽は解りやすいメロディーと単純な伴奏からなるロココ、古典派のような主題の提示から、19世紀のショパンやメンデルスゾーンと言ったロマン派時代の装飾的でかつセンチメンタルなメロディーがブレンドされたような音楽となっています。
 このピアノ五重奏はOp.87という中期以降の作品ナンバー(1822年出版)が与えられていますが、作曲自体は1816年という早い時期で、先だって出版された7重奏曲ニ短調,Op.74のピアノ五重奏版が予想以上の反響を呼んだため、未出版作品を後追いで世に出したものと思われます。

この2曲は当時のヒット作となり、このCDのカップリングでもあるシューベルトの有名な「ます五重奏」が生み出されるきっかけともなりました。シューベルトの友人・パウムガルトナーが「フンメルのような五重奏曲を」という希望をだしたのです。
 その意味では、この2曲は同時代の最も優れたピアノ五重奏曲であり、また最もポピュラーなものでしょう。
 お聞きいただければ解ると思いますが、フンメルの作曲技量、センスの良さがご理解いただけることと思います。

 このCDでの演奏は古楽器でのもので、当時の響きを彷彿させるものなのかもしれません。フンメルからショパンに繋がるピアノ曲は、装飾が多く、軽やかなタッチと主旋律を透明感ある響きで再現しなければなりません。
現代のピアノでも名演奏家はそういう演奏を聞かせてくれます。古楽器ではより明確になるはずですが、録音のためか、演奏の為か、ピアノの音が濁りすぎて聞こえるところが多々あります。

この種の古楽器演奏で演奏、録音共に優れていると思ったのは、Voces Intimae Trioの全集です。ピアノ三重奏ですが機会があれば是非。

といってもこの演奏は悪いと言っておりません。非常に丁寧に演奏されており、また楽しく演奏している様子がうかがえるものです。シューベルトのます五重奏も第一楽章から温かみと心地よいテンポで我々を魅了してくれます。

CHpt87
The Music Collection
Simon Standage violin
Peter Collyer viola
Poppy Walshaw cello
Elizabeth Bradley double-bass
Susan Alexander-Max fortepiano - director
Recorded in:
Finchcocks Musical Museum, Goudhurst, Kent
20-22 May 2013

【CD紹介】ちょっと吃驚、ヤーコプスのモーツァルト 「偽の女庭師」 K.196

 
モーツァルト:歌劇『偽の女庭師』 K.196 全曲

 ソフィー・カルトホイザー(S サンドリーナ)
 ジェレミー・オヴェンデン(T ベルフィオーレ伯爵)
 アレックス・ペンダ(S アルミンダ)
 ニコラ・リヴァンク(Br 市長)
 マリー=クロード・シャピュイ(Ms 騎士ラミーロ)
 スンヘ・イム(S セルペッタ)
 ミヒャエル・ナギ(Bs ロベルト)
 フライブルク・バロック・オーケストラ
 ルネ・ヤーコプス(指揮)

 録音時期:2011年9月
 録音場所:ベルリン、テルデックス・スタジオ
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)


 歌劇『偽の女庭師』は1775年1月にミュンヘンで初演されたオペラブッファで、18歳のモーツァルトの作品です。と言ってももう当時の作曲家より抜き出ていたので、青年期の代表作品に当たります。

 物語は、かつて恋人ヴィオランテに大怪我を負わせて音信不通にしてしまったが今はアルミンダと婚約しているベルフィオーレ伯爵の前に、サンドリーナを騙り庭師として働くヴィオランテが現れ、周囲を巻き込んで騒動になる、といったお話。モーツァルトはかなり力を入れて作曲し、初演も好評だったことが伝えられています。この作品はモーツァルトの生前にドイツ語の上演が広まり、そのためオリジナルのイタリア語オペラブッファは20世紀まで埋もれていました。近年、青年期のモーツァルトの傑作として上演が増えています。


 あえてCDを紹介するのは、このヤーコプス盤を聴いて「良かった」から。


 ヤーコプスは、既にモーツァルトの主要オペラを録音し終えていて、それぞれ話題になったり、実際演奏評価も高いものが多かったようですが、私の感想としては「溌剌さもいいけど、ねっとり男女の愛憎が絡むような演奏の方がいいかな」というものでした。例えば「フィガロ」では、マリナー盤、「ドン・ジョヴァンニ」ではカラヤン盤、「イドメネオ」ならプリッチャード&ウイーンフィル/パヴァロッティ盤などなど....。

 でも、今回、初期オペラシリーズ新譜として『偽の女庭師』 K.196がリリースされていたので、久々にじっくり聞きました。

 モーツァルトに限らず、CDでオペラを全曲通して聴くなんてことは、最近滅多になくなり年に1,2回程度です。


 それはさて置き、一番驚いたのが、その楽器編成。オペラを通して使用されている編成は、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦楽部で、第三曲のアリアのみフルート、トランペット2、ティンパニが追加されています。
 
 しかし、ここでの演奏は、
序曲から全編通してフルート2、オーボエ2、クラリネット2(絶対オリジナルには存在しない)、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦楽部という2管編成を採用しています。
 さらに、あらゆる場面でフルートやクラリネットの「今までの版では聞いたことのないソロやオブリガート」でより華やかに、色彩的に富んだ演奏になっています。
 ティンパニやトランペットの補強で、より活き活きとしたアリアに生まれ変わったり、フルートの追加で心情の変化を表したり、とまさに後期のモーツァルトの作品を聴いているようでした。

 
 版については、輸入元では下記のように紹介しています。

【版について】
この『偽の女庭師』は、1775年にミュンヘンで初演(3回上演、うち2度目は短縮版)されたました。その後同じオリジナルのかたちで上演されることはなく、1779年以降、いくつかのカット、レチタティーヴォの語り芝居への変更を施したドイツ語上演が、1780年代後半までひろく行われました。モーツァルトを愛した街、プラハで上演されたのは1796年、モーツァルトの死後のこと。この時に作られた楽譜資料が2つ残されており(Namest、Oels)、このヤーコプスの演奏はNamest版に基本的に準拠しています。このNamest版には、ドイツ語の歌詞とオリジナルのイタリア語の歌詞が併記されており、新モーツァルト全集(NMA)がこのオペラを出版した際の土台となっています(ただしNMAのオーケストレーションはNamest版よりもシンプルな、モーツァルトのオリジナルに近いもの)。このNamest版では、オリジナルのオーケストレーションはかなり大がかりなものへと変更されています。特に顕著なのが、アリアの伴奏で、管楽器パートに著しい充実がみられること。このオーケストレーションの変更を誰が手掛けたのかは不明なのですが、ヤーコプスは、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』や『ティート』がプラハで初演され、この地から世界に広まったことを例にとり、この『偽りの女庭師』もプラハで上演されてから再び上演される機会が増えたことなどを考慮して、プラハにのこされたNamest版に基本的に基づいたと語っています。ただし、Namest版でも見られるいくつかのカットは適宜修復を施していること、さらに、録音時にはセリフや歌詞などにも演奏効果などを考えて小さな変更を加えるなど、様々な資料にあたった上で練りあげられた注目の演奏となっています。(キングインターナショナル)


 いゃあ、楽しいオペラに生まれ変わったようです。このオペラは意外と多くの録音がありますが、私は断トツで今回のヤーコプス盤を推薦します。

 「作曲家が書いたもの以外は、要らない」という原典拘り主義の方にはダメでしょうけど、このCDは、フィガロなどに比べるとやや華やかさや魅力に欠けてしまうこの若き日のモーツァルトの代表的な作品を再評価するにふさわしいものだと思います。

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フンメル:歌劇『ギーズ家のマティルド』


フンメルは、1786年から1988年までの2年間、モーツァルトの家に同居してレッスンを受けていました。その間フンメルは数多くのピアノ協奏曲の名作群や、「フィガロの結婚」の完成を目の当たりにしてきました。
それだけではなく、フンメルは師匠のピアノ協奏曲のカデンツァを勉強したり、交響曲を写譜や編曲をしていました。モーツァルトのこの時期の少年フンメルに与えた影響は多大で、フンメルの死まで続きます。

その後の大きなヨーロッパ演奏旅行とクレメンティへの師事を得て戻ったウイーンで、フンメルはベートーヴェンと同じ時期に同じ師匠の元で学びます。J.ハイドン、A.サリエリ、G.アルブレヒツベルガーの3人です。ハイドンとベートーヴェンの関係は微妙でしたが、フンメルに対してはかなり評価し、援助しております。ハイドンは、エステルハージ家の自分の後継者として推薦し、フンメルの最初の就職先が決まったのです。フンメルは途中幾度となく同家との諍いを経験しましたが、結局1804年から1811年までの7年間をここで働くことになります。

この時代のフンメルの作品は、同家の作品とウイーンからの依頼作品で膨大かつ幅広いジャンルに跨っており、特にピアノを伴わない作品の多くは、この時代のものです。トランペットやファゴットの協奏曲、膨大な宗教作品や舞台作品、歌劇のほとんどが作曲されています。

この『ギース家のマティルド』もOp.100という後期の作品番号を与えられていますが、これは、ワイマール宮廷楽長の時代にこの作品を改定し、1820年に出版したためです。しかし、この作品のオリジナルは1810年に完成し・初演されています。

今回リリースされたCDには、この初版の序曲も収録されているのが嬉しいところです。

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・フンメル:歌劇『ギーズ家のマティルド』全曲
 クリスティーネ・ガイリテ(ソプラノ)
 フィリップ・ドゥ(テノール)
 ピエール=イヴ・プリュヴォ(バリトン)
 ヒョルディス・テボー(ソプラノ)
 オンドレイ・シャリング(テノール)
 マリアン・オルシェフスキ(テノール)、他
 ソラメンテ・ナチュラリ/ディディア・タルパイン(指揮)


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初のフンメルのオペラ作品の録音。拍手です。

・フンメル:歌劇『ギーズ家のマティルド』全曲
 クリスティーネ・ガイリテ(ソプラノ)
 フィリップ・ドゥ(テノール)
 ピエール=イヴ・プリュヴォ(バリトン)
 ヒョルディス・テボー(ソプラノ)
 オンドレイ・シャリング(テノール)
 マリアン・オルシェフスキ(テノール)、他
 ソラメンテ・ナチュラリ/ディディア・タルパイン(指揮)


このCDは、2008年、2009年にヨーロッパで復刻演奏された際のメンバーにてスタジオ録音されたものです。
録音は優秀で、弦が少なめのバランスですが、速いテンポで溌剌とした演奏を聞かせてくれます。
歌手陣も優秀、主人公の2人はガイリテ(ソプラノ)、ドゥ(テノール)は若々しくみずみずしい歌声をきかせてくれ、このCDが「とりあえず珍しい作品を録音してみました。演奏はニの次です」というものではなく、しっかり聞ける作品になっているところが良いです。

台詞はカットされており、音楽部分のみの収録ですが、初版の別バージョンの序曲と、間奏曲も収録されているので貴重です。

作品は初めて聞きましたが、合唱曲が多く、しかもサリエリの円熟期の作品の影響が大きいのがすぐわかります。アリアに関しては面白く聞けるのですが、モーツァルトほど優美なメロディー、官能性といったものはないです。しかし、後宮からの誘拐や魔笛ばりのコロラトゥーラアリアもあり、楽しく聞けます。全体的にティンパニが多用されていて、派手目の曲が多いです。

強引に例えると、モーツァルトの「ツァイーデ」「カイロの鵞鳥」といった未完成作品を聞いているかんじ? これには異論あるでしょうが、あくまでも一回全体を通して聞いた個人的な感想です。

とにかく初のフンメルのオペラ作品録音。拍手です。


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フンメル研究ノートというサイトは、クラシック音楽鑑賞を趣味とする一個人が、ヨハン・ネポムク・フンメルの音楽の魅力に取り付かれ、永年かけて収集した情報・データをメモ代わりに掲載している「フンメル研究ノート」のレビューページにあたります。フンメル研究ノートは、あくまでもCD解説、書籍、辞書などから集めた情報を盛り込んだ継ぎはぎの情報を集めたものですので、事実とは違っていたり、解釈が違っている箇所も多いと感じていますが、もっと多くの日本人にフンメルの音楽の魅力を知ってもらいたいと思い公開しています。もっとフンメルの情報が知りたい。またはご興味がある方は、本サイト「フンメル研究ノート」を覗いてみてください。よろしくお願いいたします。

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