モーツァルト:歌劇『偽の女庭師』 K.196 全曲

 ソフィー・カルトホイザー(S サンドリーナ)
 ジェレミー・オヴェンデン(T ベルフィオーレ伯爵)
 アレックス・ペンダ(S アルミンダ)
 ニコラ・リヴァンク(Br 市長)
 マリー=クロード・シャピュイ(Ms 騎士ラミーロ)
 スンヘ・イム(S セルペッタ)
 ミヒャエル・ナギ(Bs ロベルト)
 フライブルク・バロック・オーケストラ
 ルネ・ヤーコプス(指揮)

 録音時期:2011年9月
 録音場所:ベルリン、テルデックス・スタジオ
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)


 歌劇『偽の女庭師』は1775年1月にミュンヘンで初演されたオペラブッファで、18歳のモーツァルトの作品です。と言ってももう当時の作曲家より抜き出ていたので、青年期の代表作品に当たります。

 物語は、かつて恋人ヴィオランテに大怪我を負わせて音信不通にしてしまったが今はアルミンダと婚約しているベルフィオーレ伯爵の前に、サンドリーナを騙り庭師として働くヴィオランテが現れ、周囲を巻き込んで騒動になる、といったお話。モーツァルトはかなり力を入れて作曲し、初演も好評だったことが伝えられています。この作品はモーツァルトの生前にドイツ語の上演が広まり、そのためオリジナルのイタリア語オペラブッファは20世紀まで埋もれていました。近年、青年期のモーツァルトの傑作として上演が増えています。


 あえてCDを紹介するのは、このヤーコプス盤を聴いて「良かった」から。


 ヤーコプスは、既にモーツァルトの主要オペラを録音し終えていて、それぞれ話題になったり、実際演奏評価も高いものが多かったようですが、私の感想としては「溌剌さもいいけど、ねっとり男女の愛憎が絡むような演奏の方がいいかな」というものでした。例えば「フィガロ」では、マリナー盤、「ドン・ジョヴァンニ」ではカラヤン盤、「イドメネオ」ならプリッチャード&ウイーンフィル/パヴァロッティ盤などなど....。

 でも、今回、初期オペラシリーズ新譜として『偽の女庭師』 K.196がリリースされていたので、久々にじっくり聞きました。

 モーツァルトに限らず、CDでオペラを全曲通して聴くなんてことは、最近滅多になくなり年に1,2回程度です。


 それはさて置き、一番驚いたのが、その楽器編成。オペラを通して使用されている編成は、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、弦楽部で、第三曲のアリアのみフルート、トランペット2、ティンパニが追加されています。
 
 しかし、ここでの演奏は、
序曲から全編通してフルート2、オーボエ2、クラリネット2(絶対オリジナルには存在しない)、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦楽部という2管編成を採用しています。
 さらに、あらゆる場面でフルートやクラリネットの「今までの版では聞いたことのないソロやオブリガート」でより華やかに、色彩的に富んだ演奏になっています。
 ティンパニやトランペットの補強で、より活き活きとしたアリアに生まれ変わったり、フルートの追加で心情の変化を表したり、とまさに後期のモーツァルトの作品を聴いているようでした。

 
 版については、輸入元では下記のように紹介しています。

【版について】
この『偽の女庭師』は、1775年にミュンヘンで初演(3回上演、うち2度目は短縮版)されたました。その後同じオリジナルのかたちで上演されることはなく、1779年以降、いくつかのカット、レチタティーヴォの語り芝居への変更を施したドイツ語上演が、1780年代後半までひろく行われました。モーツァルトを愛した街、プラハで上演されたのは1796年、モーツァルトの死後のこと。この時に作られた楽譜資料が2つ残されており(Namest、Oels)、このヤーコプスの演奏はNamest版に基本的に準拠しています。このNamest版には、ドイツ語の歌詞とオリジナルのイタリア語の歌詞が併記されており、新モーツァルト全集(NMA)がこのオペラを出版した際の土台となっています(ただしNMAのオーケストレーションはNamest版よりもシンプルな、モーツァルトのオリジナルに近いもの)。このNamest版では、オリジナルのオーケストレーションはかなり大がかりなものへと変更されています。特に顕著なのが、アリアの伴奏で、管楽器パートに著しい充実がみられること。このオーケストレーションの変更を誰が手掛けたのかは不明なのですが、ヤーコプスは、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』や『ティート』がプラハで初演され、この地から世界に広まったことを例にとり、この『偽りの女庭師』もプラハで上演されてから再び上演される機会が増えたことなどを考慮して、プラハにのこされたNamest版に基本的に基づいたと語っています。ただし、Namest版でも見られるいくつかのカットは適宜修復を施していること、さらに、録音時にはセリフや歌詞などにも演奏効果などを考えて小さな変更を加えるなど、様々な資料にあたった上で練りあげられた注目の演奏となっています。(キングインターナショナル)


 いゃあ、楽しいオペラに生まれ変わったようです。このオペラは意外と多くの録音がありますが、私は断トツで今回のヤーコプス盤を推薦します。

 「作曲家が書いたもの以外は、要らない」という原典拘り主義の方にはダメでしょうけど、このCDは、フィガロなどに比べるとやや華やかさや魅力に欠けてしまうこの若き日のモーツァルトの代表的な作品を再評価するにふさわしいものだと思います。

音楽ブログランキング
 にほんブログ村 クラシックブログ クラシック作曲家へ